喫茶ロビー
遥かなる東アフリカの緑の大地
馬場 久敏
1
1福井大学名誉教授
pp.187-187
発行日 2019年2月1日
Published Date 2019/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_187
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- 文献概要
銀杏にアポトーシスの黄緑の葉を観る季節になった.晩秋の小雨で銀杏並木は一層美しく,国立ブカレスト音楽大学の女学生達,アマデウス四重奏団の “romantic” な “November Rain” や “Earth Song” のチェロを聴きながら眺めるのは実に気持ちがよい.彼女達は東ローマ帝国の末裔にもみえて “Romantics” なのであろう.自宅近くの九頭竜川では,南北朝時代にはすでに完成していたという年魚落ち鮎の投網漁が盛期である.永い年月とは….緩い川面や網打つ老漁師を眺めていると何処からか,「ゆく河の流れは絶えずして,しかももとの水にあらず.淀みに浮かぶうたかたは,かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし….諸行無常…」と長明さんに似た人が語りかけてくるような気がする.東アフリカに関わって十五年,諸々が無常というならば,私にも彼等にも何が「もとの水にあらず」なのだろうか?
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