連載 私の一冊・22
“自分とは何か”への遥かな道
島 泰三
1
1日本アイアイ・ファンド
pp.178-179
発行日 2007年2月25日
Published Date 2007/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100623
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- 文献概要
『稲作の起源─イネ学から考古学への挑戦』を本屋で探しあて読み終えたとき,「この本は,ほんとうにすごい」と,著者に一言だけでも書き送りたかった。その思いを残しておきたい。
■東南アジア,つまり「核アジア」の広さ
2005年1月,初めて東南アジアに足を踏み入れた。ヴェトナムからミャンマーへの約1か月の旅だった。私は房総丘陵にはじまって屋久島にいたる日本各地,マダガスカル,アフリカ,ブラジルと歩いてサルを野外で見ることを天職としてきたのに,東南アジアの森を知らないのは心の中の隙間だった。この旅でその隙間を埋めたかった。
しかし,もう一つ理由があった。
ニホンザルからマダガスカルのアイアイへと続いた霊長類の生態学研究に,その頃,ひとまとめができていた。サルの手と口の形と主食のつながりを明らかにして,人類の直立二足歩行の起源にまで遡って著した『親指はなぜ太いのか』(中公新書,2003),サルの研究から現生の人間種の源に達してそれをまとめた『はだかの起源』(木楽舎,2004),サルと人の社会構造の基本をさぐって,現代社会に言及した『サルの社会とヒトの社会』(大修館書店,2004)などである。
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