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尺骨遠位端骨折と遠位橈尺関節不安定性との関連
-――屍体モデルを用いた前腕遠位骨間膜のバイオメカニクス研究
Impact of distal ulnar fracture malunion on distal radioulnar joint instability;a biomechanical study of the distal interosseous membrane using a cadaver model
宮村 聡
1
S. Miyamura
1
1大阪大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Osaka University, Graduate School of Medicine, Suita
キーワード:
distal interosseous membrane
,
distal radioulnar joint
,
instability
,
isolated distal ulnar fracture
,
translation
Keyword:
distal interosseous membrane
,
distal radioulnar joint
,
instability
,
isolated distal ulnar fracture
,
translation
pp.1223-1226
発行日 2019年10月1日
Published Date 2019/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_1223
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【要 旨】
目 的:尺骨遠位端骨折の中には,遠位橈尺関節(DRUJ)の著明な不安定性を合併する症例がある.本研究では,本骨折後のDRUJ不安定症には前腕遠位骨間膜(DIOM)が関与していると考え,屍体モデルを用いて実験的に検証することとした.
対象および方法:新鮮凍結屍体6肢から,尺骨変形治癒モデル(骨幹部橈側変位)を作製し,三角線維軟骨複合体(TFCC),DIOMの異なる条件下で,尺骨頭の掌背側移動量を比較・検討した.なお,骨幹部の橈側変位はDIOMの弛緩を反映している.
結 果:背側移動量は,TFCC・DIOMの温存下では制動され,TFCCの切離により著明に増大するも,尺骨変位量には影響されず,DIOMの切離後も移動量に変化はなかった.一方,掌側移動量は,両組織の制動を受け,TFCC切離後は尺骨橈側変位(DIOMの弛緩)に伴い移動量が増加し,DIOMの切離で移動量は最大となった.
結 論:TFCC損傷を伴う尺骨遠位端骨折では,骨幹部の橈側変位を残して変形治癒すると,尺骨頭は背側脱臼するのみならず,掌側方向にも不安定となり,(掌背側両方向性の)著明なDRUJ不安定性を呈する可能性がある.本骨折は,DRUJ不安定症の潜在的な原因として認識され,治療されるべきである.
© Nankodo Co., Ltd., 2019