足関節骨折術中に肺塞栓症により心停止をきたすも救命しえた1例

Rescued cardiac arrest due to pulmonary embolism during ankle fracture surgery；report of a case

　周術期における肺血栓塞栓症（pulmonary embolism：PE）は急死の転帰をたどることが多く，近年認知度が上昇しその予防がうながされている．急性のPEは致死率が30％で，そのうち40％が1時間以内に死亡する重大な疾患である^1）．整形外科領域における術後症候性PEの発生頻度は人工股関節全置換術（THA）0.7％，人工膝関節全置換術（TKA）1.1％，股関節周囲骨折1.6％と報告されており，特に人工関節置換術後におけるPE発症に注意がうながされている^1）．一方，足関節骨折手術は中リスク群に分類されており，周術期におけるPEの報告も少ないため，一般的に十分な予防がなされないと予想される．われわれは足関節脱臼骨折術中のターニケット開放直後に心停止をきたすも，すぐに有効な胸骨圧迫を含む心肺蘇生を開始し，重篤な合併症や後遺障害をきたすことなく救命しえた急性PEの1例を経験したので報告する．