私論
整形外科として何を治療するべきなのか
園畑 素樹
1
1佐賀大学整形外科准教授
pp.414-414
発行日 2018年5月1日
Published Date 2018/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_414
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- 文献概要
私の整形外科としての専門性を尋ねられた際には,「手」,「股関節」,「疼痛」と欲張って三つの分野を答えています.
平成10年(1998年)に第41回日本手の外科学会を玉井進先生(当時奈良県立医科大学教授)が開催されたときのことを,今でもよく覚えています.その当時まだ珍しかったディベートがプログラムに組まれていました.演出も素晴らしく,討論される国内の高名な先生方が登壇されており,入場される際はプロレスラーの入場よろしくスポットライトと派手な音楽で盛り上げられていました.登壇される先生方も拳を突き上げ,サービス精神旺盛でした.どのディベートも面白かったのですが,その中に,母指手根中手(CM)関節症に対するCM関節固定術 vs CM関節切除形成術のディベートがありました.どちらの成績も安定していたという発表でしたが,切除形成術派の先生は固定術派の先生に「関節固定なんて,敗北の手術だ」といわれ,固定術派の先生は切除形成術派の先生へ「固定が敗北なら,切除はそれ以下だ」といわれていました.会場は大いに盛り上がり,聴衆の先生方へのアンケートでは両者への支持は半々といったところでした.当時の私は,「結局,症状がよくなることが目的だから,どちらでもよいのか」と一応納得していましたが,なにかしっくりこない部分がありました.
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