整形トピックス
iPS細胞を用いた慢性期の頚髄損傷治療
鈴木 秀典
1
1山口大学大学院整形外科
pp.334-334
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_334
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急性期から亜急性期にかけての脊髄損傷治療の基礎研究に関しては,ある一定の成果をすでにあげることができ,世界中で臨床治験がすすんでいる状況である.一方で,慢性期脊髄損傷治療に関しては,基礎研究レベルにおいても治療法開発についての報告は非常にわずかであり,明確な機能回復とその作用機序を示した報告はほぼ皆無である.こうした状況にもかかわらず,実際の臨床現場で治療と対応にもっとも苦慮しているものは,まさに慢性期の頚髄損傷患者である.本稿では,われわれが最近報告したToronto Western Hospital(カナダ)での仕事についてご紹介する1).
頚髄損傷後2ヵ月のマウスを用いて,iPS細胞移植とコンドロイチナーゼABC(ChABC)併用療法の治療効果について検討を行った.慢性期脊髄損傷治療においては,再生に排他的とされる脊髄微小環境をどう操作するかという点と,これまでかたくなに信じてこられた慢性期脊髄損傷は治らないという思い込みの呪縛からの脱却が大きなポイントであった.
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