最新基礎科学/知っておきたい
iPS細胞による脊髄損傷治療
海苔 聡
1,2
,
戸山 芳昭
2
,
岡野 栄之
3
,
中村 雅也
2
1東京歯科大学市川総合病院整形外科
2慶應義塾大学医学部整形外科学教室
3慶應義塾大学医学部生理学教室
pp.1114-1118
発行日 2013年11月25日
Published Date 2013/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102884
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■はじめに
中枢神経系である脊髄に損傷を起こすと,損傷部以下の知覚・運動・自律神経系の麻痺を呈する.集学的医療の進歩により脊髄損傷患者の平均余命は健常人と変わらなくなってきているが,損傷された脊髄を直接治療する方法がないのが医療の現状である.しかし,幹細胞研究の急速な進歩により,動物実験レベルでは細胞移植をはじめ,損傷脊髄の修復を促す治療法が多数報告されるようになった.基礎研究で得られた結果を臨床の現場で応用できれば,脊髄損傷に対する新たな治療法を確立することが可能となる.
近年,中枢神経系の再生医療の戦略として神経幹/前駆細胞(neural stem/progenitor cells:NS/PCs),胚性幹(embryonic stem:ES)細胞,人工多能性幹(induced pluripotent stem:iPS)細胞などを用いた細胞移植療法に世界的な注目が集まっている.特に,iPS細胞を用いた細胞移植療法の研究は急速に進んでおり,iPS細胞から種々の細胞への分化誘導法の開発や,疾患モデル動物への移植に関する研究が相次いで報告されている.
本稿では,われわれがこれまで行ってきたNS/PCs・ES細胞を用いた細胞移植研究に触れながら,現在,再生医療分野で最も注目されているiPS細胞を用いた脊髄損傷治療の現状と今後の展望について概説する.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.