私論
脊椎脊髄外科の2025年問題
中井 修
1
1九段坂病院院長
pp.124-124
発行日 2018年2月1日
Published Date 2018/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_124
- 有料閲覧
- 文献概要
1980年頃から腰部脊柱管狭窄症中心性狭窄に対し拡大開窓術を始めた.下関節突起の内側を切除するのみの手術であるが,術後椎間板が圧潰して不安定になる症例があった.下関節突起先端と下位椎弓の間に生じていた後方荷重が失われて前方荷重が増えて,椎間板が潰れるものと解釈できた.その後,さらに経過観察を続けていくと,同様の椎間板狭小化が,非侵襲椎間にも起こることが稀ではないことがわかった.椎間板の破綻は手術の影響のみでなく,加齢現象でも起こりうるのである.ある年齢になると,寿命が尽きたように一気に椎間板がいくつも潰れていく症例があるのにも気づいた.
1990年頃になってMRIが普及すると,20歳台からすべての椎間板がT2強調画像で黒になっている症例もあれば,80歳台でも全ての椎間板が白いままの症例もあることを知った.これによって椎間板には遺伝的に規定された寿命があり,それが個人によりばらついていることがわかった.私の個人的臨床経験からすると,どうも多くの人の椎間板の寿命は75歳前後であるようで,この頃から椎間板が破綻して,脊柱変形を生じたり,狭窄症を発症する人が多くなる.寿命が70歳であれば背骨の病気になどならなくて済んでいるのに,長生きしたために手術など受ける羽目になるのである.
© Nankodo Co., Ltd., 2018