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全身性エリテマトーデスの今昔
全身性エリテマトーデス(SLE)は,1950年代の報告では5年生存率がおよそ50%ときわめて予後不良でした1).その後,グルココルチコイド(GC)製剤の導入や免疫抑制薬の普及,早期診断の向上,支持療法の進歩などにより患者の生命予後は飛躍的に改善しました.1950年代から2000年代にかけて5年生存率は74.8%から94.8%へと上昇したことが示されています2).しかしSLE関連死亡率は着実に減少してきたものの,依然として一般人口に比べ高い水準にあることが明らかとなっています3).
この予後改善の背景には,飛躍的な治療薬の開発があります.1990年代までは主にGCのほか,シクロホスファミド(CYC),アザチオプリン(AZP)などの免疫抑制薬が中心でした.2015年の本邦でのヒドロキシクロロキン(HCQ)承認は画期的であり,現在では禁忌がない限りすべてのSLE患者への投与が推奨されます.さらに2010年代以降,ベリムマブ(BLM,2017年承認),アニフロルマブ(ANF,2021年承認)などの生物学的製剤が登場し,治療抵抗性の患者にも新たな選択肢を提供しています.
現在のSLE治療では,GCの使用を最小限に抑えることが重視されています.これは長期使用による骨粗鬆症,感染症,代謝異常などの有害事象への反省に基づきます.ループス腎炎(LN)においても,かつてはプレドニゾロン(PSL)換算で1mg/kg/日の高用量レジメンが幅広く用いられましたが,現在はより低用量での開始が推奨され,5mg/日以下への速やかな減量が推奨されています.さらに,関節リウマチと同様に,GCは「bridging therapy」の使用に留めることが理想との考えも提唱されています4).
SLEの治療目標は,単なる生命予後の改善から,臓器障害の予防,そして現在では「社会的寛解」へと進化しています.これは疾患活動性の抑制に留まらず,患者がSLEを有さない人と同様に就学・就労・家庭生活を送れることを目指すものです.このような包括的な治療目標の実現には,新規治療薬の開発とともに,患者中心の医療,多職種連携,社会的支援の充実が不可欠です.

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