書評
もう迷わない! 肝癌薬物療法ナビ
中川 勇人
1
1三重大学大学院医学系研究科消化器内科学 教授
pp.101-101
発行日 2025年1月1日
Published Date 2025/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika135_101
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- 文献概要
近年,分子標的治療薬と免疫チェックポイント阻害薬の登場により,さまざまながん種の薬物療法が著しく進歩している.ただし,多くのがんではガイドラインに基づく治療アルゴリズムに従うことで,標準化された治療が実施可能となりつつあるのに対し,肝細胞がんにおいては事情が異なる.具体的には,肝細胞がんのガイドラインでは一次治療や二次治療のフローチャートは提供されているが,薬剤の選択は基本的に医師の裁量に委ねられている.その理由として,進行肝細胞がんの治療選択においては肝予備能や多クローン性発がん,肝硬変合併症などの多くの要因を考慮して総合的に判断する必要があり,最終的な決定はその患者を診る主治医にしかできないともいえるからである.逆にいえば,その判断が患者の予後に大きく影響する可能性があるということでもある.また肝硬変を背景にもつ場合は,副作用が重篤になるリスクも高く,これらのマネジメントも非常に重要である.したがって,肝細胞がんの薬物治療では,ガイドラインだけではなく,高度で多面的な判断を下すための広範な知識が求められる.そのようななかで,本書では肝細胞がん薬物療法の基本から病態理解,実践的な知識に至るまで,第一線で活躍する多くの専門家によって網羅されている.
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