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はじめに:私の経歴紹介を含めて(図1)
本誌の特集は「好きになる呼吸器学:珠玉の症例集から」と名づけられたもので,内容は多くの呼吸器専門医が印象に残った自身の経験症例を提示・解説した小論文を集めたものです.企画案には呼吸器診療の楽しさ・醍醐味をぜひ伝えてほしいとの要望が記載されており,本特集の企画者 皿谷健先生の強い想いが込められています.
筆者は北海道大学病院を2018年(平成30年)3月に定年退職して,現在は親友である医学部同期の一人が経営し別の同期の一人が院長である札幌市内のクリニックで週に4日の外来診療を行っています.医師人生のほとんどの期間を大学人として長く臨床・研究・教育に関わった経験から,本企画の意図に心から賛同し,若者にエールを送りたいとの気持ちからこの原稿執筆をお引き受けしました.
私は1977年に医学部を卒業しました.6ヵ月間の大学病院内科病棟の勤務を経て,すぐに砂川市立病院内科で1年間,その後函館国立病院で6ヵ月間卒後研修を行いました.そして,卒後3年目には再び大学病院に戻り,病棟主治医を3年間勤めました.「睡眠時の呼吸調節」をテーマとして学位を取得した後,1985年からおよそ3年間BostonのMassachusetts総合病院への留学の機会を得ました.留学中の研究は呼吸調節に関する基礎研究でしたが,留学先は呼吸器内科でしたので,臨床カンファレンスにも参加することができましたし,内科ボード取得後に呼吸器専門医を目指して病棟研修をしてから研究に専念するclinical & research fellowsといつも同室でした.留学後は大学病院に戻り,2018年3月に退職するまでさらに30年間ほど,臨床・研究・教育に没頭しました.近年の研修医と比べると,いわゆる市中病院での卒後研修期間が短いことに読者はお気づきと思います.私にとって幸いだったことは,当時の北海道大学病院第一内科は主たる診療分野である呼吸器以外にも循環器(とくに肺高血圧症),代謝・内分泌,消化器患者も診ており,「全身を診られる内科医」を育てるという理念が医局の伝統的な目標として掲げられていたことでした.
このような経歴を通して私が臨床医として想うこと,それを「症例報告論文を書くべき5つの理由」と題して,若い読者に伝えたいと思います.
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