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は じ め に TSH不適切分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of TSH:SITSH)とは,甲状腺ホルモンによりネガティブフィードバックを受けているTSH値が,持続的な甲状腺ホルモン高値でも抑制されず正常~高値を示す病態の総称であり,甲状腺機能亢進症を呈する場合もある.SITSHは,甲状腺ホルモン受容体(thyroid hormone receptor:TR)の遺伝子変異により甲状腺ホルモンによるTSH分泌の抑制が欠如する病態である甲状腺ホルモン不応症(syndrome of resistance to thyroid hormone:RTH)と,自律的にTSHを過剰分泌するTSH産生下垂体腫瘍(TSH-secreting pituitary adenoma:TSHoma)に起因する場合とがある.RTHは約4万人に1人,TSHomaは約100万人に1人と推定され,ともにまれな疾患である1).甲状腺機能亢進症に対する標準的な治療は無効な場合が多く,TSHomaは手術治療により治癒可能であるため,正確な鑑別診断が重要となる.
機能性下垂体腺腫のなかには複数の下垂体ホルモンを自律的に産生する場合がある2).下垂体前葉細胞の分化に関わる転写因子の異常の関与が推定されているが,詳細な機序は明らかではない.TSHomaは全下垂体腺腫の0.5~2.0%程度とまれな腫瘍であり,その18.3%は成長ホルモン(growth hormone:GH)を,9.7%はプロラクチン(prolactin:PRL)を同時に産生すると報告されている1).
甲状腺機能亢進症状を主訴に来院し,SITSHを認めたため実施した画像検査により当初TSHomaと診断され,GH自律分泌も確認されたため,GH・TSH同時産生下垂体腺腫と診断しえた症例を経験したため,文献的考察を交えて報告する.
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