特集のねらい

　本邦の高齢化率上昇基調が問題視され始めて20年ほど経過した．その間に平均寿命も2～5歳上昇し，臨床現場で接する患者の高齢化を実感している．老年科は臓器別・疾病別に割り切って考えることが難しい診療科である．多くの高齢者は多疾患併存であり，時に複雑な病態を呈するため，診療ガイドラインを適用しにくい．多疾患併存や症状の多様性はポリファーマシーの原因になる．疾病だけではなくポリファーマシーもさらなる症状を生む可能性がある．認知機能の低下を含む生活機能・身体機能に障害・問題を抱える患者を診るのも高齢者医療の特徴である．人生の最終盤をどのように生きるのか，どのように締めくくるのかを考える手助けをするのも老年科の役割である．このように一括りに捉えにくく捌きにくいことを扱うことが高齢者医療の特徴であるといえる．