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は じ め に 2005年にFishbaneら1)は,遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(recombinant human erythropoietin:rHuEPO)投与中の患者の90%以上において周期的なヘモグロビン(Hb)変動が存在する事実を報告し,この現象をHbサイクリングと呼称した.さらに,rHuEPOの用量調節や鉄剤投与などの人為的要因が関与していると言及した.その後,Ebbenら2)はHb変動が大きい群において,Hb低値で推移する群に次いで入院率や併存疾患数が多いことを報告し,さらに,Yangら3)がHb変動は死亡率上昇にもつながるという見解を発表した.
心不全は血液透析患者における最大の死亡原因であることが知られている.Hb濃度の周期的な低下は,心筋組織の低酸素状態を惹起し,左室肥大や収縮能低下をきたす可能性が想定されている4).
rHuEPOのうち,darbepoetin alfaは98時間,epoetin beta pegolは171~208時間と半減期が長くなり,Hbサイクリングは注目されなくなった.しかし,低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(hypoxia inducible factor-prolyl hydroxylase:HIF-PH)阻害薬5)(内因性エリスロポエチンの産生を促し赤血球の産生を亢進させる経口腎性貧血の治療薬)は,毎日あるいは3回/週で内服する薬であり,したがって,透析患者でHb変動が問題になる可能性が出てきた.
われわれは,多施設共同で透析患者における腎性貧血治療の状況を前向き観察し,Hb安定性の違いに関連した心血管合併症の発症率や心血管マーカーの変化を検討した.併せて,Hb安定性に関連する因子について検討を行った.
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