特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第8章:神 経
片側の眼瞼下垂でも重症筋無力症は考えなければならない
鵜沢 顕之
1
,
桑原 聡
1
1千葉大学大学院医学研究院脳神経内科学
キーワード:
重症筋無力症
,
眼瞼下垂
,
変動
,
片側
Keyword:
重症筋無力症
,
眼瞼下垂
,
変動
,
片側
pp.640-642
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_640
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重症筋無力症(MG)とは
重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は神経筋接合部の運動終板に存在する蛋白(アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor:AChR)やmuscle specific tyrosine kinase(MuSK))に対する病原性自己抗体が生成されることにより筋の脱力・易疲労性をきたす原因不明の自己免疫疾患である1).厚生労働省指定難病の一つであり,国内における推定有病率は10万人当たり約23.1人(患者数2万9,210人)と報告されている.病原性自己抗体の存在により神経筋伝導が障害されるため,臨床的には易疲労性や日内変動を伴う全身の筋力低下を特徴とし,眼瞼下垂,複視,構音障害,嚥下障害,四肢・頸部の筋力低下,呼吸障害などの症状を呈する.約80~85%のMG症例でAChRに対する自己抗体であるAChR抗体が検出され1),約3~5%のMG症例ではMuSK抗体が検出される.AChR抗体はアセチルコリンのAChRへの結合の阻害,AChRの内在化を誘導することに加え,補体の活性化を介したAChRの破壊を起こすことで神経筋伝導を妨げると考えられており,とくに補体介在性の運動終板の破壊が,MG病態の中心と考えられている2).罹患筋によって,眼筋型(約30%)と全身型(約70%)に分類され,全身型の症例でも多くは眼症状(眼瞼下垂や複視)で発症する.またMG症例では胸腺に異常をきたすことが多く,病理では約20~30%に胸腺腫が認められる.
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