特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第7章:消化管
ピロリ菌の除菌成功と言われても検診でピロリ菌陽性の場合がある
猪口 和美
1,3
,
正岡 建洋
2,3
1済生会宇都宮病院消化器内科
2国際医療福祉大学三田病院消化器内科
3慶應義塾大学医学部内科学(消化器)
キーワード:
尿素呼気試験(UBT)
,
ピロリ抗体
,
ペプシノゲン(PG)
Keyword:
尿素呼気試験(UBT)
,
ピロリ抗体
,
ペプシノゲン(PG)
pp.579-581
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_579
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ピロリ菌の感染診断
Helicobacter pylori(以下,ピロリ菌)感染の診断には,内視鏡を用いる迅速ウレアーゼ試験,鏡検法,培養法,内視鏡を用いない尿素呼気試験,抗体測定法,便中抗原測定法の合計で6種類の検査が保険適用となっている.それぞれの検査の感度と特異度は表1に示すとおりである.除菌療法の効果判定には通常,尿素呼気試験や便中抗原測定法が用いられることが多い.理由としては,ピロリ菌の感染診断の際に上部消化管内視鏡検査が行われることがほとんどであり,原疾患が消化性潰瘍でない限りは除菌療法の数ヵ月後に再び内視鏡検査を行うことは侵襲が大きいと考えられること,また内視鏡を用いた検査は点診断であることから表1に示すように感度にばらつきが大きいこと,後述するように抗体測定法は陰性化するまでに時間がかかることから効果判定には適さないことがあげられる.ピロリ菌診断の検査にはいずれも偽陰性・偽陽性が認められることがある.偽陰性を見逃さないようにすることが大切である一方で,現在は感染していない,もしくはピロリ菌未感染の偽陽性の取り扱いにも同じく注意する必要がある.不必要な除菌治療が行われることで副作用や薬剤耐性獲得の問題が生じるためである.
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