特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第3章:血 液
圧迫骨折を診たら病的骨折を見逃してはいけない
石川 哲也
1
,
半田 寛
1
1群馬大学医学部附属病院血液内科
キーワード:
多発性骨髄腫
,
脊椎骨圧迫骨折
,
骨粗鬆症
,
病的骨折
Keyword:
多発性骨髄腫
,
脊椎骨圧迫骨折
,
骨粗鬆症
,
病的骨折
pp.437-439
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_437
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多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)の患者では,初診時約70%に骨X線検査で打ち抜き像(punched-out lesion)に代表される溶骨性病変が認められる1).MMの患者ではこの溶骨性病変による脊椎骨の圧迫骨折もしばしば認められ,ADLの低下につながっている.しかし脊椎骨病変の多くは,骨X線像,骨MRIなどの画像検査上は骨粗鬆症と類似の所見であり,病的骨折とみなされず骨粗鬆症としての治療のみが行われ,MM診断が遅れることも少なくない.結果として,骨病変が進行し,MM診断時には化学療法を受けられないADLになっていたり,長期臥床を余儀なくされることによる誤嚥性肺炎や褥瘡などの合併症を起こすリスクが増加したりすることにつながる.そのため,骨病変を診た際にMMを鑑別の一つにあげることは,非常に重要である.また骨粗鬆症による圧迫骨折と診断された場合には,消炎鎮痛薬として非ステロイド抗炎症薬(non-steroid anti-inflammatory drugs:NSAIDs)が処方されるケースも多いが,MMであった場合には骨髄腫腎の急激な増悪を招くことがしばしばある.診断の遅れも相まって腎予後が不良になり維持透析が必要となったり,治療選択肢の減少につながったりするため,NSAIDsの安易な処方は避けるべきである.
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