高齢女性における循環器疾患

Summary

▪日本人女性の寿命は男性より5歳以上長く，85歳以上の人口の約2/3を女性が占める．

▪65歳以上の女性では心疾患による死亡確率が高い．注意すべき疾患は，左心駆出率の保たれた心不全（HFpEF）や深部静脈血栓症・肺動脈血栓塞栓症，たこつぼ症候群，微小血管狭心症などである．

▪女性の冠動脈疾患（CAD）は男性より10歳程度遅く発症し，罹患率は低いが，一度発症すると予後はわるい．CADの危険因子は，とくに喫煙・糖尿病が重要である．ハイリスク症例やCADの二次予防に脂質異常の治療を行う．

▪心房細動の罹患率は女性が男性より低く，症状が強い．心房細動の血栓性合併症や抗凝固薬の出血リスクには性差はない．

▪CAD予防目的のホルモン補充療法は結論が得られておらず，critical window therapyが検討課題である．