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ANCA関連血管炎性中耳炎とは
アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus:AAV)のなかでもとくに多発血管炎性肉芽腫症は,上気道から初発することが多く,中耳炎から初発することもある1).中耳に限局した抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)関連血管炎は,厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班による多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA),顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)の診断基準に合致しないことが多く,診断に難儀する.また,AAVに伴う中耳炎は共通した臨床像を呈することから,“ANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA-associated vasculitis:OMAAV)” と呼ばれるようになった.2013年に日本耳科学会にANCA関連血管炎性中耳炎全国調査ワーキンググループ(OMAAV-working group(WG))が発足し,OMAAVに関する全国調査を行い,297例が集積された2).これらから,OMAAVの臨床的特徴は,以下のようであった.① 抗菌薬または鼓膜換気チューブが奏効しない難治性中耳炎で,進行性の感音難聴が続発する.② MPO-ANCA陽性が60%,PR3-ANCA陽性が20%,両ANCA陰性例も20%に認める.③ 顔面神経麻痺を40%,肥厚性硬膜炎を30%に合併する.④ 肺病変を40%,腎病変を30%に合併する.⑤ くも膜下出血による死亡例もみられる.また,日本耳科学会ではこの全国調査の結果をもとに,OMAAV診断基準を提唱し(表1),2016年には診療の手引きを発刊している2).
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