Book Review
リアルワールドデータの真っ赤な真実―宝の山か,ごみの山か
小田倉 弘典
1
1土橋内科医院院長
pp.1388-1388
発行日 2018年6月1日
Published Date 2018/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika121_1388
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――いまリアルワールドデータを読み解く意味
いまや『統計学が最強の学問』(西内 啓,2003)であり,『今後10年間で最もセクシーな職業は統計家である』(ハル・ヴァリアン,2009)らしい.統計学は何故にそのような「破格の扱い」を受けるに至ったのか?
その前に,まず医学的な因果推論について考えてみたい.この世に因果律が成り立つかどうかの根本命題は脇に置くとして,少なくとも医療,とくに薬物療法を行う際に「AならばB」が成り立つか否かは最重要である.心房細動抗凝固療法の場合,Aは「抗凝固薬を服用する」,Bは「脳塞栓(+大出血)が予防できる」である.一般に因果関係が偽であることを証明するには反例を一つ挙げれば事足りるが,真であることを証明することは難しい.そこで統計学の登場である.「Aであるときに必ずしもBである」必要はないが,「AであるときにBとなる確率は,AでないときにBとなる確率より高い」ことを言わなくてはならない.この統計学的因果推論こそEBMの主文法である.統計的因果推論には2つの方法論がある.一つは世界の現状を「記述」する仕方,もう一つは世界に「介入」(具体的には一つの条件のみ異なる2つの集団を比較)する仕方である.
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