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明治維新150年にあたる2018年のNHK大河ドラマは『西郷どん』である.本特集は「NAFLD/NASH診療のイノベーション」と題し,本年が “NAFLD/NASH診療維新元年” となることを期待して企画した.60年間もの長期にわたって継続してきた本誌「内科」の歴史においてもイノベーションという表題は初めてらしい.イノベーションとは1911年に,オーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって定義され,一般には技術革新のことと誤解されているが,「それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を創造して,社会的に大きな変化を起こす」ことである1).2014年に「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」が刊行されてはや4年が経過し,非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)診療のイノベーションが起ころうとしている.
NAFLD/NASHは成人の4人に1人が罹患する最多の慢性肝疾患であり,ウイルス肝炎の撲滅に目途がついたポスト平成時代における肝臓病学の王道となる.本特集に際し,NAFLD/NASH診療の歴史を欧米と比較して振り返ってみた(表1).Romeoらが最初に報告したPNPLA3遺伝子多型(single nucleotide polymorphism:SNP)の発見は,最大のインパクトであり,厚生労働省NASH研究班(班長:大阪府済生会吹田病院名誉院長 岡上 武先生)でも肝線維化を伴うNASH発症にPNPLA3 Gアレルが寄与していた2).とくに日本人ではPNPLA3遺伝子型GG homozygoteが一般人口の約20%に存在し3),白人や黒人に比して著しく多い.肝に脂肪を蓄える能力は飢餓を乗り切るには好都合であったが,飽食の現代には不利に働くこととなった.機序の解明は不十分だが,PNPLA3 SNPが肝発がんにも寄与することは今やグローバルコンセンサスである.
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