1枚のシェーマ
高度石灰化僧帽弁輪に対するhalf and half technique
柴田 利彦
1
1大阪公立大学心臓血管外科
pp.678
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu75_678
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15年前の手術である.透析例で著明な僧帽弁輪石灰化(MAC)を伴う僧帽弁狭窄例であった.MACを除去し,左室から僧帽弁輪にパッチを当てて僧帽弁置換(MVR)を行う予定であった.ところが,MACは左室心筋にかなり食い込んでおり,このままMACを除去すると左室破裂が必至と思われた.とはいえ,このままでは術中死であるため,なんとか人工弁を縫着して集中治療室(ICU)に送ろうと思った.前尖側は石灰化がなく通常に糸針が通るが,後尖側は左房に縫いつけるしかないと思い,石灰化を人工弁の開閉に支障がない程度に削った.後尖側は左房から刺入した針を僧帽弁輪直近の左房に刺出した.すべての糸が左房の同一平面に刺出されているので,これならSJM機械弁(St. Jude Medical社,St. Paul)をsupra-annular positionに乗せるができる.上半分と下半分で運針が異なることから,half and half techniqueと名づけた(図1).
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