1枚のシェーマ
薄皮1枚の血管鞘が助けてくれた縫っても裂ける肺動脈損傷
田川 努
1
1長崎医療センター呼吸器外科
pp.590
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu74_590
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14年前に完全鏡視下肺葉切除を導入したころ,82歳・男性の左上葉切除でA1+2c近くの血管鞘を剝離中に黒い血が噴出した(図1,2).損傷はpin-holeであったが,5-0プロリン糸をかけたら裂け,やっとかけて結んだら裂け,再縫合でさらに裂け,A6分岐部までの約2 cm長に拡がった.豆腐が崩れるように裂ける様子は今も覚えている(図3).肺動脈分枝を処理し,周囲のテンションとブルドック鉗子の重みをとって,A6分岐部に残った血管鞘を拾い,祈りながら糸をかけて結んだら裂けなかった.引っ込んだ血管鞘も引っ張り出して,中枢側までなんとか縫えた(図4).
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