内視鏡外科トレーニングルーム スーチャリング虎の穴・9
左で縫う
内田 一徳
1,2
Kazunori UCHIDA
1,2
1Clinical Advisory Board, M・O・E・T INSTITUTE(Microsurgery & Operative Endoscopy Training)
2たかの橋中央病院外科
pp.269-274
発行日 2010年2月20日
Published Date 2010/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102976
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Dr. 押忍!
原稿の締め切りに追われ,京王プラザホテルで日本内視鏡外科学会(JSES)の隙を縫いながら書いています.ここでも「縫う」,すなわちスーチャリングのテクニックが活かされているのです!
今回も前回に引き続き運針のお話になります.私の知る限り,最もクールな運針をする外科医の1人に「Dr. 押忍!」という人物がいます.彼の吻合技術は素晴らしく,空腸-空腸吻合がなんと5分….両手が見事に協調し,リズム感に富む流れるような運針をします.しかし,彼には内視鏡下縫合・結紮の基本はまったく当てはまりません.長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督の少年野球指導語録「球がこうスッと来るだろ」「そこをグゥーッと構えて腰をガッとする」「あとはバァッといってガーンと打つんだ」は有名ですが,まさに彼の技術も「鉗子をこうスッと寄せるだろう」「そこをグッと構えて糸をガッと取る」「あとはバァッといってキュッと結紮するんだ」という感じで,グリップもクソ握り,セットアップも軸も関係なし…まさに天才です.でも彼は決して初めから天才であったわけではなく,むっちゃ練習していますし,今もトレーニングを続けています.不器用な男で見た目もヤバそうですが,とても純粋かつ患者さんのための努力を惜しまない外科医で,私にとって大切な友人の1人です.
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