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痛みの定義:痛みとは?
人間は組織の損傷あるいはそれが切迫した状態に痛みを感じ,ケガなどをしないように行動をとるようになる.痛みは本来,体の危機を感じるためのシグナルである.
現在,国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)は痛みを以下のように定義している1).
IASPによる痛みの定義
“An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage.”
「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する,あるいはそれに似た,感覚かつ情動の不快な体験」(日本疼痛学会訳)
この新しい定義には以下の付記がある.
・痛みは常に個人的な経験であり,生物学的,心理的,社会的要因によってさまざまな程度で影響を受ける.
・痛みと侵害受容は異なる現象で,感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできない.
・個人は人生での経験を通じて,痛みの概念を学ぶ.
・痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきである.
・痛みは,通常,適応的な役割を果たすが,一方で,身体機能や社会的および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともある.
・言葉による表出は,痛みを表すいくつかの行動の一つにすぎない.コミュニケーションが不可能であることは,ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験している可能性を否定するものではない.
もともと,1979年に発表されたIASPの痛みの定義では組織損傷があることを前提としていたが,新しい定義では組織損傷がない痛みがあることを明確にしている.患者が表現できない痛みも拾う必要があり,必ずしも組織の損傷がない/少ないような慢性疼痛や構造異常の少ない痛みでも,医療者が痛みとして受け止める姿勢が求められる.そして心理社会的ストレス,生活背景,文化・言語的背景を観察・把握し痛みの評価に当たることが不可欠となる.

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