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どんな薬?
エトポシドは1960年代に開発された植物由来の殺細胞性抗腫瘍薬で,悪性リンパ腫,急性白血病,肺小細胞がん,精巣がん,膀胱がんなど多くのがん種で使用されています.エトポシドは,北アメリカ,カナダに自生するメギ科の多年草(ポドフィルムなど)で,根茎から抽出したポドフィロトキシンを原料として,1966年に初めて合成されました.
筆者ががん薬物療法看護を学習し始めた2000年ごろは,エトポシドは「VP-16」と呼ばれていたと記憶しています.確かにこの年代の論文を確認すると「VP-16」あるいは「VP-16-213」と表記されていますが,今ではその呼び名を聞くことはありません.そこで「VP-16」の名前の由来を改めて調べてみましたが,略号,一般名,略称などと説明されている記事がほとんどでした.エトポシドのインタビューフォームで確認すると略号,一般名とも一致しませんでした.さらに「etoposide」をWikipediaで調べてみると,VP-16はエトポシドのニックネームで,この薬の初期研究を行った化学者Von Wartburg(フォン・ヴァルトブルク)の姓とポドフィロトキシン(podophyllotoxin)を組み合わせたものと考えられるとのことでした.では,16は何なのかなど疑問は残り,結局はなぜこの言葉を広く使っていたのかは解明できませんでしたが,ポドフィロトキシン誘導体の記号ではないかと想像されます.
エトポシドの作用は濃度と時間に依存していることから,腫瘍に長時間接触させることにより抗腫瘍効果が高まると考えられ,注射薬に加えて経口薬が開発されました.いずれも連日投与による治療効果が示されています.ただし,注射薬と経口薬では保険承認されているがん種が異なるので注意が必要です.
エトポシドの点滴を長時間行う場合には注意しなければいけないことがあります.エトポシドは溶解したときの濃度によって結晶が析出することがあります.これはエトポシドの濃度と投与時間が影響しているのですが,結晶によって点滴ルートが閉塞したり,体内に入って塞栓症を起こす危険があるため注意が必要です.筆者が以前経験したのは,エトポシドを点滴静注していた非ホジキンリンパ腫の患者さんから「点滴ボトルの中がキラキラしている」とコールがありました.ベッドサイドに行ってみると本当に点滴ボトルの中がスノードームに似た感じで結晶がキラキラしているのが見えました.まずは,点滴を中止して患者さんの自覚症状と点滴ルートの閉塞を確認し,新しいものに交換しました.幸い問題となる事象はありませんでしたが,知識がなくそのまま投与を続けていたらと思うと,薬剤の知識を知ることの重要性を改めて感じます.

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