「意思決定支援」の手前で

はじめに

　advance care planning（ACP）をはじめとして，臨床現場での「意思決定支援」がしば しば話題に上るようになって久しい．社会の高齢化が進むことに伴って「意思表示困難」 な人が増えていることと，本人の意向や価値観を反映した形で医療を提供したいという思 いをもつ医療者が増えていることが，医療業界での「意思決定支援」ブームの誘因となっ ているのだろう．医療者が独断で医療行為の優先順位を決定していた時代と比較すれば， それは大きな進歩といえるのかもしれない．しかしながら，筆者は「意思決定支援」のあ り方にいくつかの懸念をもっている．以下，それらについて書き留めてみたい．