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1981年以降,がんは日本人の死因第1位であり続け,国民の2人に1人が生涯のうちにがんに罹るといわれています.一方で,がん医療の目覚ましい進歩によって,がんの生存率は多くの部位で上昇傾向にあり,「がん=死」という時代から「がんとともに生きる」時代へと移り変わってきています.がんの治療を終えた,あるいは治療を受けながら日常生活を送っているがんサバイバーは500万人を超えるともいわれています.
このような状況にておいて,がん患者はがんの進行もしくはその治療過程のなかで,体力低下や機能障害,精神・心理的障害が引き起こされ,日常生活動作(activities of daily living:ADL)や生活の質(quality of life:QOL)が著しく低下してしまいます.こういった背景もあり,近年では「がんのリハビリテーション」に対する注目が増してきており,第4期がん対策推進基本計画の分野別施策「がん医療」のなかの一つとして,「がんのリハビリテーション」が組み込まれています.
従来から,リハビリテーションは機能障害やADL制限などに対する治療手段として重要な役割を担ってきましたが,がんのリハビリテーションにおいては,がん種や治療方法,そして時期(治療前・中・後)などにより,その実施内容や目的が異なってくるという特徴があります.がんの領域では,いわゆる回復期のリハビリテーションだけでなく,予防期や終末期におけるリハビリテーションも同様に重要な役割を担っています.また,日本社会においても多様性が叫ばれる昨今においては,がん患者一人ひとりの個別性を尊重した多種多様ながんのリハビリテーションの理解および実践が求められており,そのためにはがん医療に携わる多くの他職種と協働していくことが欠かせない領域でもあります.
そこで今回は,多職種連携の中心的な存在である看護師が知っておきたいがんのリハビリテーションに関する最新の知識やアセスメントのポイント,看護師に求められる役割などについて解説しています.さらには,看護師が病棟や外来で実施可能な簡易的なリハビリテーションなども紹介しています.
本特集を通じて,より多くの看護師が「がんのリハビリテーション」に興味をもち,臨床現場で実践する際のTipsを掴んでいたければ幸いです.
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