特集 がん患者のセルフケアを支えるアドヒアランス
アドヒアランスを高めるための学習理論とは?
三浦 里織
1
Saori MIURA
1
1東京都立大学健康福祉学部看護学科/がん看護専門看護師
pp.668-670
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_668
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がん薬物療法とアドヒアランス
1960年代,代謝拮抗薬の投与から始まった化学療法は,当時入院治療だった.投与による副作用は患者に対して身体的,精神的にも影響が大きく,「抗がん薬=コントロールできないつらさがあるもの」というイメージが大きかった.抗がん薬の種類,各がん種への適応の拡大,副作用を軽減する支持療法などが日進月歩で進んだため,抗がん薬は点滴投与だけでなく経口投与も可能となった.また,外来にて抗がん薬投与を希望する患者も多く,経口抗がん薬を内服治療する患者も増加した.その結果,自宅にて抗がん薬投与に関する管理,副作用マネジメントを患者・家族が行うこととなったのである.
しかし,患者・家族は治療の続行を希望するためか,患者の副作用について医療者は評価が過少となる傾向があると報告されている1).それは治療継続をむずかしくし,患者だけでなく医療者にとっても不利益が生じる.
抗がん薬治療を始めるときには,まずその患者が積極的にこの治療に参加するという「アドヒアランス」をとらえ,十分なアドヒアランスが備わっていない場合には向上できるようにかかわる必要性が生じる.看護師をはじめとした支援者は,アドヒアランスを高めるためのさまざまな方策が必要となるため,自らの指導を根拠立てるための理論的な考えが必要となる.そこで,患者の治療に対するアドヒアランスが向上するための学習理論および関連する理論をいくつか紹介したい.
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