連載 がん薬物療法看護のWhat’s Trending! Past ☞ Current ☞ Future 【14】
がん薬物療法領域の抗体薬物複合体(ADCs:antibody drug conjugates)の特徴と取り扱う看護師の役割
菅野 かおり
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1公益社団法人日本看護協会神戸研修センター
pp.645-650
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_645
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はじめに
すべての薬物は,生理活性(阻害活性,拮抗活性)が認められたものであってもそれがすぐに医薬品になるわけではなく,安全で薬理効果をもたない化合物を添加し,加工・成形して最終的な製剤となっていく.こうしてできあがった点滴薬や錠剤,カプセル,シロップ,貼り薬などの医薬品としての形態を総称して薬剤とよぶ.これらの薬剤はある程度の効果が期待できる一方で,使用する患者の個体差によって作用と副作用の出現がコントロールできない,または効果を発揮しないといった問題がしばしば出てくる.とくにがん薬物療法の分野では,投与した抗悪性腫瘍薬は腫瘍細胞だけでなく正常細胞にも分布するため,思ったような効果が得られずがんの進行を抑えることができない,あるいは副作用が強く出現し治療が継続できないなどといった問題が生じる場合がある.より効果的で安全に使用できる薬剤を作るために,さまざまな製造技術を使って薬剤が開発されている.
抗悪性腫瘍薬のなかで,最近注目されているものの1つに抗体複合体がある.これは,抗体に細胞傷害作用をもつ低分子化合物や放射性同位素を結合させた薬剤で,目的とする患部まで薬物や放射性同位素を的確に運び,そこで効果を示すように設計された薬剤である.このうち,抗体と細胞傷害作用をもつ低分子化合物を結合させたものを抗体薬物複合体(ADCs)といい,2022年5月現在で7剤が日本で承認されている.本稿ではADCsの特徴とそれらを取り扱う看護師の役割についてまとめる.
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