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神経細胞はシナプスを介してシグナル伝達することにより神経回路を形成し,神経回路のシステムとしての集積が脳の機能を構成する。中枢神経系のほとんどのシナプスは化学シナプスであり,神経伝達物質の放出により情報伝達が行われる。神経伝達物質はシナプス前末端部のシナプス小胞に蓄えられており,開口放出によりシナプス間隙へと遊離する。この開口放出の過程,特に分泌小胞とシナプス前膜の融合の制御因子としてSNARE蛋白質が同定され,その機能が明らかにされつつある。
SNARE蛋白質とは,酵母から哺乳類まで保存された60種類以上のメンバーからなるファミリーであり,構造と分子量は様々である。ほとんどのSNARE蛋白質はC末端で膜構造と結合しており,ほとんど全ての細胞内膜系の融合反応を媒介していると考えられる。異なるSNARE蛋白質が複合体を形成し,細胞内輸送小胞と目的部位の細胞膜との融合を制御している。これまでに最も解析されているSNARE複合体は,シナプス小胞と前シナプス膜の融合制御に関与するものである。シナプスにおけるSNARE蛋白質は,シナプス小胞膜に局在するv-SNARE(VAMP2)とシナプス前膜に局在するt-SNARE(syntaxin-1,SNAP-25)に区別される。膜融合に際し,v-SNAREとt-SNAREは相互作用してSNARE複合体を形成する。SNARE複合体の形成(すなわち,SNARE蛋白質の集合)においては,SNAREドメインと呼ばれる共通領域(60-70アミノ酸)がモジュールとして働き,可逆的かつ強固な蛋白質間相互作用により安定な複合体形成に寄与する。本稿では,最近明らかにされつつある新規細胞骨格関連蛋白質セプチン(Septin)によるSNARE複合体形成と神経伝達物質遊離の制御機構について概説する。
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