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本特集では,「いまはこうする がん看護」と題して,がんの進行によって起こる症状への対応,あるいはがん治療によって起こる有害事象の対応などの支持療法について,最新のエビデンスに対応した看護実践について考えることを目指している.
がん治療の進歩により,2008年から2010年の全部位全臨床病期の5年相対生存率は67.9%で,1997年から1999年の61.8%から徐々に改善している傾向がみられる.また,副作用や症状を抑える支持療法も発展し患者の苦痛の緩和と治療の継続に貢献している.このような変化の中でケアの方策も変化をしているが,新たな知見が普及されるにはタイムラグがある.慣習で行っていること,以前からあたり前に行ってきた実践が通用しなくなっていると感じることはないだろうか.新たな知見を活用することが患者にとって必要であると認識していても他職種にケアの根拠を説明できないゆえにコンセンサスが得られないことなど,チーム医療と言われている中で周知されていない現実もある.一方で,患者の情報収集能力は目を見張るものがある.なぜなら,患者は自身の最善の状態を保つために,がんの治療を続けるために,苦痛を緩和するために,必死になって調べているからにほかならない.
このように,変化の激しいがん医療の中で,エビデンスをふまえ患者のニーズにタイムリーに応えるためには,常に,知識とスキルをアップデートする必要性が高まっている.そのために看護師は,最新のエビデンスに基づいた,経験に頼らない支持療法の在り方を学ぶこと,加えて薬物療法・非薬物療法の知識を深めることが必要で,それをもって初めて実践に活かすことができると考える.
本特集では,進行期の症状緩和や支持療法に焦点をあて,古くから継続されて現在も重要であること,いまは考え方などが変化していることを整理し,最新のがん看護実践について考えることを目指している.加えて,看護師の研究的視点を養い,ケアの創造やスキルの向上のため,研究論文の知見を実践につなげ,それを活かすことを意識して立案した.
とくに,がん診療・治療の場で遭遇することの多い,疼痛治療のポイントや突出痛の考え方,対応が困難な吃逆のケア,せん妄の予防的ケア,放射線皮膚炎のケア,がん化学療法の悪心療法最前線,殺細胞性抗がん薬と作用機序がまったく違う免疫チェックポイント阻害薬の副作用,irAEのケアなどの内容を盛り込んだ.
本特集が,がん看護の現場において多職種で共有され,多くのがん患者のケアの向上に役立つものとなれば幸いである.
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