特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
医療不信があった患者 現在の医療チームに対してイライラした様子をみせるようになった卵巣がん患者
紺井 理和
1
1聖路加国際病院看護部/精神看護専門看護師
pp.183-186
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_183
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❁ 事例紹介
Tさん,60代半ば,女性.
患者は性器出血にて1年前に近医婦人科を受診して,右卵巣軽度腫大を指摘された.1年後の再検査にて右卵巣腫大が増大していたためMRI検査をしたところ,悪性の可能性がきわめて高い所見でさらなる精密検査が必要になった.その後,検査や治療をどこで行うかを家族と相談した結果,夫の会社と仕事上の別宅に近い当院での加療を希望して外来を受診した.検査の結果,やはり右卵巣がんが強く疑われたため,数日後に入院して子宮全摘および両付属器切除術施行.その後,病理検査でリンパ節転移を認めたため術後に補助抗がん薬療法をすることになった.入院当初から絶対に元気になって退院すると明るかった患者が,転移と抗がん薬治療について医師から説明された数日後からふさぎ込み,ときにはイライラした様子をみせるようになった.医師から患者の様子が心配だと相談され病室で話をきくことになった.
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