特集 ゲノム医療とがん看護 ~私たちはなにを知って,なにをする?~
【がんゲノム医療入門】
ゲノム医療とはなにか?
土原 一哉
1
Katsuya TSUCHIHARA
1
1国立がん研究センター先端医療開発センタートランスレーショナルインフォマティクス分野
pp.713-717
発行日 2020年11月1日
Published Date 2020/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_713
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はじめに
ゲノム異常の原因やそれによって引き起こされる生体への影響を解析することで,多くの疾患の本態解明が進んできたが,これらの知見を疾患の予防,スクリーニング,治療に結びつけていくのがゲノム医療である.ゲノム情報をがん医療に応用する方法は,①ゲノムの変化を「検査」することにより予防,診断に活用すること,②ゲノム情報を書き換えることにより「治療」に活用することに大別できる.
現時点では,がん細胞に生じた遺伝子異常を正常に戻すことは実現していないが,末梢血からTリンパ球を取り出し,がん抗原を認識するT細胞受容体(TCR)あるいはがん細胞を認識する抗体の標的抗原認識部分とリンパ球活性化分子との融合タンパク(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子を体外でTリンパ球に導入して増殖させ,がんに対する攻撃力を高めた人工リンパ球を投与する遺伝子改変T細胞療法が開発されている.一方,がんゲノム検査の臨床応用はより広範に進んでおり,本稿ではゲノム検査の進展を中心に解説する.
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