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付帯5
緩和ケア病棟で亡くなったがん患者における補完代替医療の使用実態と家族の体験についての研究
鈴木 梢
Kozue SUZUKI:がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科
はじめに
補完代替医療を使用しているがん患者から相談を受けたことはないだろうか.われわれ医療者は補完代替医療について正しく理解し,がん患者のよき相談相手となれているだろうか.そもそも補完代替医療とは何を指すのだろうか.欧米諸国においてがん患者の補完代替医療の使用頻度が上昇していることが報告されており1),その内容として,呼吸法,ヨガ,瞑想などの心身療法も上位を占めている2).症状緩和や生活の質の向上をもたらす補完代替医療と従来の医療を併用する統合医療の概念も広がっている.一方,わが国においてこのような心身療法を含めた補完代替医療をどの程度のがん患者が取り入れて,どのような体験をしているのかは,近年明らかとなっていない.がん診療にかかわる医療従事者が,まずはがん患者の補完代替医療の使用実態やその体験について理解することは,がん患者と補完代替医療について話し合うきっかけとなり,結果的にがん患者の安全で適切な補完代替医療の使用につながることが期待される.
付帯2
医療用麻薬の管理・廃棄・適正使用および生活状況に関する実態調査
三浦 智史*1,沖崎 歩*2
*1Tomofumi MIURA, *2Ayumu OKIZAKI:国立がん研究センター東病院緩和医療科
はじめに
進行がん患者の60~90%が経験する症状であるがん疼痛に対しては,世界保健機関(World Health Organization:WHO)が提唱するWHO方式がん疼痛治療法が日本でも普及してきており,医療用麻薬消費量も徐々に増加傾向にある.日本において,メサドンやフェンタニル即効性製剤,慢性疼痛に対する医療用麻薬の使用が認可され,医療用麻薬の消費量は今後もさらに増加することが予想されている.一方,医療用麻薬が大量に消費されている米国においては,医療用麻薬の濫用や依存が深刻な問題となっており1),日本においても同様の問題が出現することが懸念される.日本では,厚生労働省より「医療用麻薬適正使用ガイダンス」が出されており,自宅での麻薬保管の留意点には,①他人に転用しない,②小児の手の届かない場所に保管する,③残薬の処理方法(麻薬診療施設や麻薬小売業者に持参するように指導)の3点が重要とされている.
わが国において,医療用麻薬の廃棄に関する検討は1報の報告があり,薬局における患者向けリーフレットの使用が医療用麻薬の回収の啓発に役立つというものであった2).
また,現代社会において自動車は広く普及し生活に必要なものであるが,わが国においては,医療用麻薬を使用中は運転に支障をきたしうるため禁止されている.先行研究では医療用麻薬が始まっても車の運転を続けていた患者は約10%と報告されていた3).しかし,医療者に対する緩和ケアの啓蒙・教育活動の結果,医療用麻薬をがん治療中の段階から使用している患者は増加していると予想される.
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