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近年,患者中心の医療を実現するために,患者報告型アウトカム(PRO:Patient Reported Outcome)に対する関心が高まっている.PROの歴史は古く,たとえば患者に対して痛みの程度を0~10段階で尋ねることもPROの1つであるし,看護研究で用いられてきたQOL尺度などのアンケートもPROである.しかし,このような評価スケールの使用は,痛みなどの一部の項目や看護研究などの場面に限られ,日常のがん看護で活用されることは少なかった.
この10年くらい,世界的にPROに関する研究が多く実施され,PROががん患者に対してもたらす利益が明らかになってきた.そのなかには日常的にPROを利用することにより,患者の生存期間が延長するという驚くべきものもある.PROに関する研究は世界的にも発展途上であるが,PROには潜在的に大きな効果が見込まれるため,わが国の今後の臨床における利用が推進されることと,わが国でPROを用いた研究が発展することを期待し,今回,特集を組むことになった.
特集では,まずPROとはなにか,どのようなエビデンスが報告されているかなどの概要について説明し,現在のわが国の臨床におけるPROの活用状況の実態調査を紹介する.
次に,PROを臨床で用いる場合には,どのような評価スケールを用いるかを決めなくてはならないため,わが国で利用可能な主な評価スケールを紹介する.また,将来的にはPROは電子カルテやスマートフォンなどのICTデバイスに組み込むことが重要となるため,この点についても解説する.
PROは「どの評価スケールを用いるか」より「どのようにPROを用いて,看護に役立てるか」が重要である.そのため,わが国で先進的にPROを臨床で使用しているいくつかの施設に依頼し,がん看護のさまざまなシチュエーションで実際にどのように用いているか,そして,実際上の困難をどのように克服したか,PROは患者に対してどのような利益があったかを解説してもらった.
この特集を契機として,多くの病院・病棟でPROの活用が進み,患者中心の医療が展開されるとともに,将来的な発展のためのエビデンスが構築されていくことを期待している.
© Nankodo Co., Ltd., 2020