特集 生活の視点で読み解く! 今日の緩和ケア ~患者になにが起こっているのか~
Ⅰ 食べる
食欲不振のケア
平山 さおり
1
1KKR札幌医療センター患者サポートセンター/がん看護専門看護師
pp.399-401
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_399
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看護師のアセスメント
食事を口から食べることは,単に栄養素を摂取するだけではなく,人間らしく生きる原点としてQOLを高めるという重要な意義をもつ1).食事摂取量の低下は,体重という数値で具体的に実感したり,ボディイメージの変化をもたらすことにより,病状の進行や死をイメージさせて不安になることがある.また,体力が低下すると,日常生活動作に影響を及ぼし,今までできていたことができないという喪失を体験したり,他者に頼らなければならないことが増えることでの自律性の低下によるスピリチュアルペインを体験することもある.
がん患者の遺族調査によると,死亡前2週間に食欲不振は約8割の患者が体験しており,4割の家族は「とてもつらかった」と答えておりつらい記憶として残っている2).家族は「食事をとらないと,余計に病気が進んでしまうと思った」,「毎日どのような食事を準備すればよいのか悩んだ」という苦悩を体験しており3),食欲不振は家族へ与える影響も大きい.なんとか食べてほしいと願いながら準備する家族の思いと,食べることができなくて家族の思いに応えられない患者の状況に対して,両者が申し訳なさや無力感などを感じていることもある.このように,患者と家族の両者の心理面のアセスメントも重要である.
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