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どんな薬?
慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)は,造血幹細胞レベルの細胞に染色体転座が起こり,フィラデルフィア染色体(Philadelphia (Ph) chromosome)という異常染色体が形成されることによって造血幹細胞が過度に増殖する疾患です.
イマチニブは,CMLの原因であるPh染色体の異常遺伝子から産生されるBCR-ABLチロシンキナーゼを標的にした抗がん薬として開発され,日本では2001年に承認されました.それまでは,厳しい治療を受けても思うような治療効果が得られなかったCML患者さんにとってイマチニブは希望の薬となり,「本当にこんな内服薬で治療効果が出るの?」と驚きつつも,表情は輝いていて「これからは自宅で家族と過ごしながら治療ができる」と一緒に喜び,希望を語ったのを今でも覚えています.その後,BCR-ABLチロシンキナーゼだけでなく,PDGFR,KITチロシンキナーゼも阻害することがわかり,適応疾患が増えました.
CMLにおけるイマチニブの治療目的は,白血病細胞を十分減少させることにより,病期の進行を抑え,慢性期を長期間持続させることです.これまで白血病の治療効果をみるときには血液学的効果を見ていましたが,イマチニブの登場に伴い,治療効果を見るための評価として細胞遺伝学的効果,分子遺伝学的効果というのがあることをその当時は初めて知りました(表1).こういった新しい言葉や概念を理解するのは本当にたいへんだったことを覚えていますが,その後も種々の抗がん薬が登場し,そのつど新しい考え方を受け入れていかなければならないのだということがわかってきました.
日本での承認当時,海外からの輸入品であったイマチニブは全長約2 cmもあるカプセル錠で,非常に飲みにくい大きさでした.さらに1回で4~6錠飲まなければいけないため,患者さんは本当に苦痛で,飲みきれない,あるいは飲むことができないといった状況が多く見受けられました.そのため,服用しやすい製剤の開発が望まれ,2005年には現在販売されている小型のフィルム錠になっています.薬は現場の声を聞きながら工夫し,再開発されていくものであることも実感した瞬間でした.
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