特集 外科外来マニュアル
私の治療
上肢・下肢
瘭疽・爪囲炎
若林 利重
1
1東京警察病院外科
pp.695-697
発行日 1982年5月20日
Published Date 1982/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207990
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□概説
指趾の化膿性炎症を総称して瘭疽という.それは指趾の末節屈曲側は解剖学的に特殊な構造を有し炎症の進展形式も他の部のものと異なるためである.しかし爪周囲の皮膚の炎症は,とくに爪囲炎といつて一般に瘭疽とは区別されている.指の末節屈曲側は腱鞘が指骨の中心側骨端部に付着し,その末梢側は閉鎖腔のような形になつている.この部の皮膚は厚くて強靱であり縦に走る多くの線維組織で隔壁を作つている.その隔壁の内部には脂肪組織がつまつており,ここに感染がおこると骨膜に達しやすい.この中を貫いて末梢に向かつて走る血管は脂肪組織の炎症性浮腫によつて圧迫され,血行障害をおこすので骨壊死をきたしやすくなる.しかし閉鎖腔の中心側には骨端部に向かう血管の枝があり,これがおかされることは少ないので骨端部や腱鞘が壊死に陥ることは比較的少ない.瘭疽はその部位によつて表皮下瘭疽,皮下瘭疽,爪下瘭疽,骨瘭疽,関節瘭疽,腱瘭疽などに分けられる.瘭疽の種類によつて治療法も異なり,経過も長短種々である.瘭疽というと,とかく抜爪考えがちであるが不必要な抜爪は避けるべきである.爪囲炎はしばしば爪下瘭疽に進展することがある.しかし,これが骨瘭疽にまで進転することは殆んどない.
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