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自己紹介
私は新人看護師のとき外科病棟に配属になりました.手術療法を受ける方や,終末期の方が入院していて,多忙な病棟でした.ある日,私は胆管がん終末期の60歳代の女性を担当することになりました.この方には毎朝9時30分ごろから悪寒戦慄を伴う発熱がありました.挨拶に行くと,患者さんは「こわい.もうすぐ寒気がおそって来る.あの寒気は恐怖です」と話されたのです.毎日同じ時刻に訪れる悪寒戦慄による苦痛への恐怖と孤独感が強く,耐えがたいものだと話してくださいました.当時の外科病棟は9時30分から外科医師と看護師がともに病棟内をラウンドしながら患者全員の回診をすることになっていました.その時間と患者さんの苦痛な時間は重なっていたのです.この時間帯は看護師の訪床が少ないこともあり,孤独感がよりいっそう増強していたのかもしれません.私はこの方が感じている苦痛で恐怖・孤独な時間をともに過ごしたいと思い,思い切って先輩に相談しました.すると先輩は「患者さんのそばについていていいよ.回診は私たちで行うから大丈夫」と笑顔で言ってくれたのです.そのときの先輩の顔は今でも鮮明に覚えています.そして走り回りながら回診を終え,汗を流している先輩方の姿も鮮明に覚えています.その日からその方を担当する看護師は,9時30分から患者さんのそばで言葉をかけ,背中をさすり,ともに過ごす方針になりました.
何か行動を起こすとき,継続していくときにはいつも仲間との連携・協力が必要です.新人看護師の時期に,看護は一人で行うことではないことを教えてくれた先輩方に感謝しています.外科病棟配属となったことで,私は疼痛看護に興味関心を寄せ,がん性疼痛看護認定看護師への道へ進みました.その後,たくさんの方々と出会い,考えを共有し,意見を交換していくうちに,自分の学びを深める必要性を痛感し,がん看護専門看護師の道を歩むようになりました.
新人看護師のときに出会った患者さんは,私に「あなたが担当してくれたときから私の孤独と恐怖がやわらぎました.ありがとう」と話してくださいました.そしてその翌日,亡くなられました.看護・医療において大切なことは何か……,たくさんあると思います.私の考えの中核にはチームで行う看護の素晴らしさが根付いています.
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