連載 がん化学療法におけるナーシング・プロブレム【97】
高額薬剤の費用対効果の考え方 ~看護師の視点から~
足利 幸乃
1
1公益社団法人日本看護協会 神戸研修センター
pp.407-412
発行日 2019年5月1日
Published Date 2019/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_407
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がん薬物療法の世界では,新薬の価格が高いこと,とくに抗がん薬として新しい機序をもつ新分類の新薬は,従来の薬より高くて当然という暗黙の了解のようなものがある.さらに,抗がん薬は生死にかかわる薬であり,使用しなければ,死期を早め,再発リスクを高くする可能性がある.このため,医療者が抗がん薬のお金について公然と議論することは,よくない行為とされてきた.
五十嵐1)は,医療におけるお金のタブー視を聖域とよび,その聖域にメスを入れた黒船の1つとしてオプジーボ®(ニボルマブ)2)をあげている.オプジーボ®以上に高額な超高額といわれる新薬も登場してきており,高額な抗がん薬治療がわが国の医療経済に及ぼす影響,患者・家族に及ぼす影響を費用対効果から検討することが必要とされている.
本稿では,抗がん薬における高額薬剤の費用対効果の論点について,筆者の理解の及ぶ範囲で整理し,看護師の視点からこの問題について考察したい.なお,特定の薬剤の問題を例にとって記述を進めているため,商品名と一般名表記を混在させている.この点をご了解のうえ,読み進めていただきたい.
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