Feature Topic がん診療のコスト原論
薬価制度と高額薬剤、薬価制度と費用対効果—コスト評価で見通せるもの、抜け落ちるもの
五十嵐 中
1
1東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学
pp.228-235
発行日 2017年7月15日
Published Date 2017/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200188
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国民皆保険制度の変遷
半世紀以上の長きにわたって日本では、「国民皆保険制度」という言葉が「全ての国民が公的医療制度に加入できる(実質的には、加入する義務がある)」状態という本来の定義を超えて、「その公的医療制度でほぼ全ての医薬品が賄われる」状態として理解されてきた。
高く評価されてきた日本の医療保険制度であるが、財政面では大きな課題に直面している。国民医療費は、2013年度には初めて40兆円を超え、国内総生産(GDP)に占める割合も8.29%と過去最高になっている。2010年の厚生労働省の試算では、2025年には国民医療費は52.3兆円に達するとみられている。医療費増大の要因としては、高齢化だけでなく、医療技術の高度化なども関与している。例えば2015年のデータでは、国民医療費の伸び率3.8%に対して、高齢化の寄与が+1.2%、人口変動の寄与が−0.1%(人口減少のため、マイナスの値)、そして医療技術の高度化などを含む「その他」の要因が+2.7%と、高齢化以外の要因の寄与が大きくなっている。「その他」の要因の寄与割合2.7%は、2000年以降で最も大きな数値でもある。
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