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多死社会を迎える日本において,最期のときに身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛が和らぎ,その人が望む最期を過ごせるよう支援するケア,つまりEnd of Life Careはとても重要である.このEnd of Life Careの質的な向上のためには,どのような取り組みが効果的だろうか.
倫理的な課題が多いEnd of Life Careでは,看護師が不全感やジレンマを抱くことが多い.End of Life Careの教育では,自ら実施してきたケアを振り返る機会をもつことや,つらかった経験から意味を見出せるように言語化できる環境をつくること,すなわち「リフレクション」がカギになると報告されている.
リフレクションは,専門職に求められる実践力を育成する教授法と考えられ,看護教育に多く導入されている.リフレクションの効果には,さまざまな状況に対応できる能力を備え,自分を成長させることや,何気ない看護にこそ深い意味があることを実感するなど,物事の見方に変化を与えるなどの報告がある.したがって,リフレクションという語りの機会を通して体験に向き合い,振り返ることが重要と考える.問いかけられたり,自問したりすることで考えがすすみ,一人では気づかない新しい発見が見えてくるかもしれない.また,不全感やジレンマで覆い隠されていた学びに気づけるかもしれない.
リフレクションのプログラムは多様にあるが,この連載ではカードを用いたリフレクションのプログラムを全3回で紹介する.これは,参加者どうしの学びあいを促進し,カードに書かれた「問い」をヒントにディスカッションがすすむので「なんて問いかけたらよいのか」などの心理的な負担感が少なく,取り組みやすいと考える.また,3年間にわたるプログラムのアンケート結果やインタビュー結果なども紹介し,その効果についての考察を述べたい.
End of Life Careの質的な向上のためには,どのような取り組みが効果的なのか,また,体験を振り返ることの意味などを,深く考える機会になれば幸いである.
日本の高齢化率は平成29年の内閣府発表によると27.7%となり,多死社会にどのように対応したらよいかが重大な社会問題となっている.最期のときをどのように過ごすか,どうしたら苦痛が最小限となり,その人らしく過ごせるのか,悩みはつきない.この悩みは,患者・家族だけでなく,彼らに向き合い,寄り添う医療者も同様であり,葛藤や苦悩が伴う.したがって,End of Life Care(EOLケア)に携わる医療者の苦悩を緩和しケアの質的向上を支援することは重要である.
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