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外来化学療法室の環境と災害時の問題
がん薬物療法は現在,外来での治療が主流となり,多くのがん患者が外来化学療法室で治療を受けている.
患者が治療を受ける外来化学療法室の環境について考えてみよう.外来化学療法室が20~40床程度の施設の場合,1日あたり50~90人が治療を受ける状況にある.そしてさまざまながん種,レジメンがあり,治療の進行状況もバラバラである.また,外来化学療法室にいる患者のパフォーマンスステータス(Performance Status:PS)もさまざまであり,治療で使用している薬剤は細胞傷害性抗がん薬などのHazardous Drugsである.そのため,看護師をはじめとしたスタッフは投与時,薬剤運搬時,廃棄時など曝露に注意が必要である1).このように通常診療においても,外来化学療法室の環境は患者側,治療・医療者側にリスクが潜んでいることが一目瞭然である.
それでは,災害時に起こることとして,どのようなことがあるだろうか.ここでは,発生の時間や場所,規模の予測がむずかしい地震災害時を例に考えてみよう.「リクライニングチェアやベッドからの転落の危険」,「曝露や血管外漏出を生じることなく安全に終了させて避難する方法の選択」,「点滴台の転倒による薬剤曝露の可能性,その初期対応」などが挙げられる.多くの医療機関では,地震災害を想定した災害対策マニュアル,発災時の役割や対応がわかりやすくなるようにアクションカードが作成されていることがある.しかし,外来化学療法室は治療などの理由から,病院共通の災害対策マニュアルによる対応がむずかしい状況がある.災害発生時に何をするのか,安心して対応することができる力,つまり災害時の対応力を高めるためには,日ごろからの訓練が求められる.
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