特集 災害時のがん看護を考える ~被災地における経験からの提言~
緩和ケアを必要とするがん患者に災害が及ぼす影響
白井 祝子
1
Shukuko SHIRAI
1
1一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院看護部/がん看護専門看護師
pp.259-261
発行日 2019年3月1日
Published Date 2019/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_259
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緩和ケアとは,「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQuality of Life(以下,QOL)を,痛みやそのほかの身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで,苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」,と2002年に世界保健機構(WHO)により定義されている1).日本において『生命を脅かす病』として第1に考えられるのは『がん』である.がんは現在の日本人の死因の第1位となっている疾患である2).また,2018年に出されたがん罹患数の予測結果は1,013,600人とされており,その数は年々増加している3).医療者は増加し続けているがん患者に対し,早期に緩和ケアを提供し支援していくことが求められている.「がん治療の初期段階から緩和ケアを実施すること」は,第1次がん対策推進基本計画の中で重点的に取り組むべき事項として掲げられており4),2018年度から施行された第3期がん対策推進基本計画の中にも「がんと診断されたときからの緩和ケアの推進」という内容で盛り込まれている5).緩和ケアとは,がん医療において必須のものであり,すべてのがん患者と家族に対して適切に提供されるべきものである.病勢の進行に伴う諸症状だけではなく,診断直後のサポートから治療に伴う副作用マネジメントなど,がん医療において緩和ケアが担う役割は大きい.しかし,ひとたび自然災害が発生したとき,医療者は救急対応や外来診療の問合せ対応等に追われ,通常の診療やケアを提供することが困難となる.そして,それは緩和ケアに関しても例外ではない.
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