第Ⅳ章 各論:がん患者へのケアとエビデンス 症状マネジメントとケアのエビデンス
精神症状 ~抑うつとせん妄~
林田 由美子
1
1虎の門病院看護部/精神看護専門看護師
pp.184-188
発行日 2019年2月25日
Published Date 2019/2/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_184
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がん患者の抑うつ
がん患者の抑うつは,QOL低下,治療アドヒアランスの低下,入院期間の延長,身体症状の増強,生命予後の悪化,自殺リスクなどと関連する1).
抑うつは状態像であり,正常範囲の悲しみから精神医学的診断としての「うつ病」まで広い範囲を示す.抑うつ状態を呈する精神障害として,うつ病や適応障害がある.
がん患者の抑うつは見過ごされることが多い.不安が強い患者と異なり,自ら苦痛を訴えることが少なかったり,がんに罹病するという苦境なのだから気分が沈むのは正常として判断されたりするためである.しかし,がんと診断されて1年以内は自殺のリスクが高いとの報告もあり2),抑うつの早期発見,早期対応が望まれる.
うつ病の診断基準(DSM-5)3)によると,うつ病は9項目の症状のうち,「抑うつ気分」または「興味または喜びの減退」のいずれかを満たしたうえで,5項目以上の症状がほとんど毎日,2週間以上継続するものをいう.臨床では抑うつ症状の問診・観察リストとして用いるとよい(表1).
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