第Ⅱ章 総論:がんとエビデンス
がんと生物学
濵﨑 慎
1
,
鍋島 一樹
1
1福岡大学医学部 病理学講座
pp.104-108
発行日 2019年2月20日
Published Date 2019/2/20
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_104
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がんとは
悪性新生物(がん)は日本における主要死因別死亡率の第1位であり,2017年のデータでは生涯でがんに罹患する確率は男性6割,女性5割といわれている.
腫瘍(新生物)とは,生体内の細胞が自律的に増殖して生じる病変の総称であり,ほとんどの場合,不可逆性の変化を指す.「がん」という用語は腫瘍のなかでもとくに悪性腫瘍に対して使用される言葉であり,「上皮性悪性腫瘍=癌(腫)」と「非上皮性悪性腫瘍=肉腫」を合わせた語である.生体内で生じる細胞の増殖には,修復・再生・過形成などがあり,欠損した組織の回復のために起こる修復および再生では,必要な過程が終了した時点で細胞の増殖は停止する.また,ホルモンの影響や持続的な刺激によって誘発される過形成においても,原因が取り除かれた時点で細胞の増殖は停止する.しかし悪性腫瘍の場合,その細胞増殖は生体からの制御から完全に逸脱し,無秩序に進行する.
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