特集 外科手術器具の理論と使用法
Ⅲ.エネルギーデバイス
マイクロ波機器の歴史と今後の展望
谷 徹
1
,
仲 成幸
2
,
山田 篤史
3
,
谷 総一郎
3
1滋賀医科大学バイオメディカル・イノベーションセンター
2日野記念病院
3滋賀医科大学外科
キーワード:
マイクロ波
,
エネルギー機器
,
アクロサージ
Keyword:
マイクロ波
,
エネルギー機器
,
アクロサージ
pp.1160-1164
発行日 2017年11月25日
Published Date 2017/11/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_geka79_1160
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医療用エネルギーとしてのマイクロ波の発展は,エネルギー全体の流れの中でとらえることが必要である.この経過はMassarwehらにより以下のようにまとめられている1).
エネルギーが医療界に用いられたのは,電気の発明と電気による生体への影響の発見に始まる.1786年Luigi Galvaniが生体との反応を見出し,電気生理学が発祥した.1897年にはFranz Nagelschmidtが関節病や循環不全に電流が有効なことを見出し,組織加温を“diathermy”と名づけた.Joseph Riverは1900年に二極からのスパークが組織を凝固することを見出し,皮膚の癌性潰瘍治療に用い,外科における電気治療が誕生した.1910年ごろWilliam ClarkはNagelschmidtやDoyenらの機器の改良をすすめ,炭化せずに組織を破壊することを“desiccation”と呼び,Bovie活躍の場を提供した.Bovieは現在電気メスの最初として知られる高周波電流をcutting,coagulation and desiccationに使える装置をつくった2).以降,電気外科学では止血効果がさらに追及されていく1).
モノポーラに代わり,バイポーラ電気外科器具が完璧に血管内層を融合することに成功し,外科医が生体自身のクリップを止血用につくることができる高周波凝固切断器として,1998年に紹介された3).組織を挟み,凝固に続き出血なく切断する手術デバイスは止血操作を省け,手の届かない部位でも手術可能となり,鏡視下手術の発展とロボット手術の技術的基盤となった.
© Nankodo Co., Ltd., 2017