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は じ め に
Spherical periacetabular osteotomy(SPO)は,寛骨臼形成不全に対して前方から骨切りを行い,寛骨臼の被覆を改善する手術であり,原俊彦先生(飯塚病院整形外科)によって考案された.寛骨臼形成不全に対する骨切り手術にはさまざまな術式が存在するが,① 前方(内側)のみからアプローチすること,② 内板を抜かないことの両方の特徴をもつ点でほかの術式と区別される.まず前方のみからアプローチする利点は,皮切が小さく,短外旋筋群が温存でき,中殿筋への侵襲が少ないこと,それらにより回転骨片への血流も維持されやすいことがあげられる.また,内板を抜かないことの利点は,quadrilateral surface(QLS)が温存され,その内側の閉鎖動脈の損傷が回避できるため安全性が高いこと,産道に影響しないことなどがあげられる.
一方で注意すべき点として,外側大腿皮神経麻痺や大腿神経麻痺が生じうること,涙痕半割の技術的なむずかしさ,脚短縮が起こりうることなどがあげられる1).それぞれについて理解したうえで,手術手技や骨切りラインを工夫することが重要である.
また,アプローチについては,原法は腸骨切骨アプローチ,すなわち上前腸骨棘を切骨して展開する方法であった.このアプローチは近位部分の視野が良好で,大腿神経麻痺が生じにくいというメリットがある.西脇らは2018年に,骨盤骨切りにおける縫工筋内側筋間進入を報告した2).これは縫工筋と腸骨筋の間より骨盤に進入する方法であり,筋腱温存が可能である.また,上前腸骨棘を切骨しないため,腸骨切骨進入と比較してより低侵襲である.しかしながら,大腿神経に負担がかからないように術中の配慮が必要である.
現在,われわれは縫工筋内側筋間アプローチによるSPOを数多く行っており,本稿ではその適応,術前計画,手術の具体的な手順,手術の際に注意すべき点について述べる.SPOは比較的新しい手術であり,それを行う施設や医師により,考え方ややり方が少しずつ異なることが多い.その中でわれわれが日々考えていること,手術の詳細を述べる.

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