Japanese
English
成人股関節疾患の診断と治療 Ⅰ.疫学・病態
3.感染性疾患
股関節症に潜む炎症性疾患
Inflammatory diseases behind hip arthritis
北出 誠
1
,
松峯 昭彦
1
,
谷 哲郎
2
M. Kitade
1
,
A. Matsumine
1
,
T. Tani
2
1福井大学整形外科
2大阪大学運動器医工学治療学
1Dept. of Orthop. Surg., Faculty of Medical Sciences, University of Fukui, Fukui
キーワード:
infection
,
RA
,
18F-fluoride PET
,
bisphosphonate
Keyword:
infection
,
RA
,
18F-fluoride PET
,
bisphosphonate
pp.23-29
発行日 2025年10月20日
Published Date 2025/10/20
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei88_23
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は じ め に
人工股関節全置換術(THA)は,国内でも年々実施件数が増加している(2010年度:約4万件,2020年度:約7万件).一方,THAの重篤な合併症である人工関節周囲感染(periprosthetic joint infection:PJI)は,インプラントの抜去と再置換を要し,身体能力の低下や死亡率の上昇を招くなど,患者に甚大な影響を与える1).基礎研究では,インプラント感染モデルが非インプラント感染モデルに比べて約200倍少ない細菌量で感染が成立することが示されており2),感染下でのTHA実施は禁忌とされている.そのため,THA前に感染例を除外することは重要である.しかし,感染を完全に否定できる検査はなく,たとえばC反応性蛋白(CRP)などの炎症反応が上昇している場合に,THAが可能か否かの判断に苦慮する.
一方で,股関節症を契機として炎症反応の上昇を認め,関節リウマチ(RA)を診断しうる症例も少なからず存在し,過去の報告では単純X線像でLarsen分類grade 1以上の股関節症を8.9%に認めたとする報告もある3).まれではあるが,股関節の破壊が急速に進行したRAの症例を経験する.RAの疾患コントロールは長期成績にかかわる可能性があるため,すみやかな疾患活動性の制御が求められるが,同時に股関節症の進行と強い疼痛が存在する状況では,手術の待期期間をしいる必要があり,手術時期の判断に苦慮することとなる.
本稿でわれわれは,股関節破壊が急激に進行する要因として炎症性疾患を背景にもつ症例を報告し,その治療方針について考察を交えて述べる.

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